「優しさって何だろう問題」と「It’ my pleasure」。

2018/04/12未分類


ここ2〜3週間我が家では、頻繁に訪れる来客を交えて「優しさって何だろう問題」で持ちきりだった。
事の発端は、僕が妻に些細な申し出をして、そこに居合わせた友人に「何でそんなに優しくできるの」と尋ねられたことだったのだが、決して僕は優しくしようと思っているわけでもないし、むしろ自分は結構ドライで感情薄めの人間だし、そうした方が自分の中では合理的で納得できるからやったんだとコメントした。そこから議論が始まり、時に激しい論争にもなりつつ大いに盛り上がった。

話は変わるが昨日、オフィスでとあるビジネスメディアでの男性の育児に関する取材を受け、こちらも大いに盛り上がったのだが、これがもし「育メン特集」だったら取材依頼を断っていたと思う。育メンという言葉にはやっぱり今でも抵抗を感じるし、その抵抗とはつまり育メンという言葉に帯びる「育児に積極的な優しい男性」という含意・ニュアンスだと思う。別に僕は妻や子どもに優しくしようと思って育児に積極的にコミットしているわけでなく、それが面白く楽しく、学びが多いから(つまり最強のエクスペリエンスだから)やっているだけで、それを育メンなどと称されるのが癪だし、それは誤解だし誤報だと思うのだ。

ソウ・エクスペリエンスにおける働き方などにおいても似たようなことが言える。例えばオフィスに子どもを連れてくる子連れ出勤の取り組みなどは、決して「みんなに優しくしてあげよう」と思って始めたわけではなく、まだ会社の人数が少なく僕の長男が幼児の頃に、妻も忙しくしていたので子どもをオフィスに連れていけないと日々が回らないという事情があったからだし、産休育休でしばらく休みになるスタッフに子連れでもいいからできるだけ早く戻ってきてほしいから(オフィスに50人前後いる今でこそマシになったが、同時の10人にも満たない状況で1人抜けられるのは正直本当に辛い)、つまり自分たちの都合優先で考えたことが、結果として「子連れでも出勤できる社員に優しい会社」という風に捉えられているだけだ。(この辺りの事情は以前『働きやすい、は「優しさゆえ」ではなく「厳しさゆえ」』というブログを書いてるので興味ある方はぜひご参照あれ)
同じようにオフィスには週4勤務の人とか時短の人とか副業している人とかもいるが、それも優しくしようと思っているわけではなく、そうすることで有能な人が比較的長い間一緒に働いてくれるので僕らが助かるのだ。

要するに「臆せず自分都合を優先させると当然自分たちにも良いし(当たり前)、その上ラッキーなことに周囲からも礼賛される」という良い事尽くしで何とも不思議な法則がどうやらありそうだぞ!という話なのだが、そんな議論をあーだこーだ繰り返している中、今年1月のLAでの空港の話をふと思い出した。

その日、僕が乗る予定だった飛行機が遅延したので空港で使える$10のチケットをお詫びにもらった。僕はそれを使ってビールでも飲んで過ごそうと思ってレジに向かったら、このチケットではお酒は買えないという。何だよ!と思ったのだが文句言ってもダメそうだったので諦めようとしたその時、僕の後ろに並んでたおばちゃん、ほんとに庶民的な雰囲気の普通の地元のおばちゃんが、私が払うからあなたビール飲みなさいと申し出てくれた。いや、悪いよ、と遠慮する僕。でもおばちゃんは「It’s my pleasure. これで私は今日一日晴れやかな気持ちで過ごせるから良いの」と言って、僕は丁寧にお礼を伝えた。今回の一連の優しさって何だろう問題の中で、このIt’s my pleasureが蘇ってきた。そうそう、It’s my pleasureなの。あくまでこちらの感情、こちらの気持ち、こちらの心地良さ、こちらの都合、そしてこちらの喜び、It’s my pleasure。you’re welcomeに似た意味だとはある程度理解していたものの、これが妙にしっくりきた。アメリカ(イギリス?)豊か!!!

来客の一人であった息子の通うパーマカルチャー保育園の園長は、ミツバチだってせっせと花粉を運んであらゆる植物の成長に不可欠な役割を担っているように見えるけど、ミツバチは単にお腹が空いて美味しい蜜を吸いに行ってるだけ(ミツバチにとって美味しい蜂蜜はエルブジとかNOMAのようなもの)ですからね、と分かるような分からないような話をしてくれたが、でもそういうことだと思う。
そしてもう一人の来客(友人)は「コミュニケーションは成功した誤解だからね」というラカンの言葉(らしいけれど検索するも発見できず)を残して去って行った。

「優しいね」「嬉しい、ありがとう」素直に答えればこんな厄介な話をしなくても済んだのだが、色々巡ってきた議論を思い出しながら書いてたら長くなってしまった。さぁ昼飯いくぞ!

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西村琢(Tak Nishimura)
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